経験曲線効果と新規ビジネス

2015/11/22

経験曲線効果( Experience curve effects)というビジネス法則がある。戦略ファームのBCGを設立したブルース=ヘンダーソンが提唱したもので、「生産量の累計が増えるにつれてコストが下がる」傾向を指している。

経験曲線に関する有名なストーリーとしては、“Made in Japan"が強かったころの日本の製造業が知られている。 簡単に言うと、日本のメーカーは価格設定を低めに設定することで市場シェアをとり、米国などのメーカーに勝っていった、というもの。シェアの大きいメーカーほどコスト低減効果が働き利益が多く得られる。

類似の法則に"学習曲線"もあるが、経験曲線の方がより事業レベルに立った包括的な性質を取り扱っている。

経験曲線をスタートアップに生かす

経験曲線の考え方はスタートアップにも生かせる。 定型的な生産プロセス・サービス提供プロセスを決めたら正攻法でたくさん売る、というものだ。

何の変哲もないシンプルな手法ながら、実行するのは意外と難しい。

往々にしてベンチャーは資源不足・人手不足のため、まず「受注しちゃって大丈夫なのか?終わるのか?」ということになりがちだ。 また、価格を下げて受注するということは目先の利益は圧迫されるわけで、体力のないベンチャーには相当の気合いが要る。

多少なりとも逃げ腰なところがあったり、苦しいポイントを避けてうまくやってやろうというスタンスだと物量をこなせずに終わる。

「どベンチャーをやりたいなら相当の覚悟がいる」と言われるのは、こういう局面でどう頑張れるかが成否を分けるからだと思う。

負け戦は避ける必要があるが、引き分けに持ち込めるような山や、勝つか負けるか分からない案件、負のリスクが知れている商売であれば積極的にやった方が良い。

エクスペリエンス・カーブの存在はビジネスにとって「将来勝てる」という夢でもあり、これを知っているかどうかで意思決定も変わってくる。

マネジメントへのインプリケーション

経験曲線効果を前提においた場合のビジネス立ち上げの着目ポイントは、「初期サービスの満足度が成立しているか?」と「活動の物量は足りているか?増やせないのか?」の2点だと思う。

初期サービスには欠陥が多いため、マネージャーは文句も言いたくなるかもしれない。ただ、そのような細かいプロセスの良し悪しよりもサービス提供の物量の方が主要なドライバーであることを経験曲線は主張している。

おそらく、失敗もまた組織学習としてコスト低減効果に組み込まれるため、いずれ自然に解消されるということなのだろう。

新規ビジネスでは相対的に人件費などの固定コストの割合が高くなりがちなため、時が経つだけで体力が削られていく。だから、動きが遅くなることの方が持続可能性に大きなダメージを与える。

ジリ貧になるとよりリスクを取りづらくなるため、細かい欠陥はあまり気にせずあわただしく走っていた方が安全だ。

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