Androidタブレットの評価 2021年

2021/03/20

仕事用のクライアント機器として、Androidタブレットを使う比率が上がっている。現時点のタブレットの主な特徴を挙げると以下のような点がある。

  • 基本形はタッチデバイスであり、立った状態でも使える。キーボード・マウスを付けると、操作体系がPCと近くなる
  • フルサイズのディスプレイに接続できる。ただし、GalaxyTabのDeXに依存している。OS標準機能にする予定があるようだが未実現。この機能の有無は大きな違いがある
  • ARMベースでパワーマネジメントが行き届いているため、すぐに使えてバッテリーが保つ
  • インカメラ内蔵で、ビデオ会議のアプリが適切に動作する
  • Gmailやオフィス代替のGoogle Workspaceのクライアントが、ある程度適切に動作する

基本的にハードウェアについては、ノートPCよりもタブレットの方が優れている。ソフトウェア面はPCと同じではないため、PCで使っていたものをやめてしまえるなら、スマートデバイスでも概ね支障はない。

キーボードが別体である

タブレットの評価ポイントはノートPCとの比較にある。ノートPCとの最大の違いは、キーボードがないことだ。
キーボードは消耗品であり、ソフトウェア開発などで大量に打ち込んでいると一番先に壊れる。

また、主な比較対象のMacBookは、ここ数年キーボードのできが著しく悪かった。修理には出せるがその間は使えず、立て込んでいると修理に出せない。けっきょく、MacBookはキーボードとともに使いつぶす機器になった。

タブレットの場合は、出先では何もない分コンパクトであり、デスク上では品質に優れたキーボードを接続できる。この点はノートPCよりも圧倒的に優れている。

OS自体の完成度は高い

アプリケーションの面ではPC向けOSの方ができることが多いのだが、タブレットPCは今のところ下火のジャンルであり、OSの完成度が低い。
たとえばMicrosoft Surface goにLinuxをインストールしたクライアントは、機能面ではおおむね理想的と言える。 ただ、ドライバの非互換でアップグレードのたびに再設定が必要となることや、バッテリー消費を抑制する手段が乏しく、維持に難がある。

Androidは、OSレイヤの動作にほぼトラブルがなく、通知が適切に動作するなどプラスの面もある。

ディスプレイ接続はOSレイヤの課題

現時点で、PCとの比較で差がつくのは外部ディスプレイ接続だろう。
AndroidでUSB-C→HDMI接続可能な機器はそれなりに多いが、基本的にはスマホ画面のデッドコピーであり目的と異なる表示になる。

SamsungのDeXはほぼ意図した通りに動作するため、同様の機能がOS標準になるのが期待と言える。Huaweiも外部ディスプレイに対応していたが、政争によりHuaweiごと市場から消えてしまっている。
DeXについて補足すると、デュアルディスプレイになりそうでならない。実際には外部ディスプレイを利用している間はタブレット画面はほぼ死んでいる。

印刷は比較的問題ない

紙への印刷はプリンタメーカーのサポートしだいだが、事務的な印刷はほぼ問題ない。 基礎的な機能はAndroid標準で提供されており、GooglePlayからメーカーのプラグインソフトをインストールすると、縮小印刷などの追加機能を利用できる構成になっている。

開発機をクラウドに置くとAndroidでも遜色がない

ソフトウェア開発については、ネイティブアプリのような特殊な依存を持つ分野を除くと、基本的にはLinuxが最適であり、クラウド上に開発環境を作るのが最もパワフルと言える。

MacOSは開発ツールが豊富だが、dockerがVMになってしまったりGPLのツールが排除されていたりという難があり、Linuxではない部分に限界がある。

クラウド上に開発環境ができると、クライアント側に必要なものはSSHクライアントだけになる。AndroidにはJuiceSSHなどのクライアントがあり、ほぼ問題ない。
タブレットとしてはiPadの方が全体的な完成度が高いのだろうと思うが、高機能なSSHクライアントが有料サブスクリプションとなっていて、要のパートに難がある。

なおこの構成上、コードエディタは emacsになった。まさか今さらemacsを使うことになるとは全く考えていなかった。
LSPが進化したおかげで、VSCodeと同様のコード支援がemacsやviでも使えるようになっている。また、日本語入力についても SKKを使うとAndroidの日本語入力に依存することなく適切に編集できる。

Chrome DevToolsがない

Androidの惜しい点は、ChromeのDevToolsが使えない点だろう。ブラウザはほぼPCと同等なのだが、JavascriptのデバッグにはDevToolsが必要になるため開発上のネックになる。
Linux ChromeにRDP接続する構成は考えられるが、他の用途がないため今のところ採用していない。

コピー&ペーストができない

Androidでできないことの最大のネックは、アプリ間のコピー&ペーストだろう。
ペーストできる場合もあるのだが、かなりの場合、コピーできない。そのため、プレゼン資料の制作は非常に難しい。
Googleスライドは概ね問題なく動作するのだが、コピー&ペーストを含めAndroidアプリに編集機能の制約があるため、相当難がある。

MS Officeではない点も含め、コンサルティングの仕事ではほとんど使いものにならないのではないかと思う。
現地でプレゼンするだけであれば良いが、コンサルティングワークには資料を作るプロセスも避けられない。

フルブラウザを用いた機能補完

Googleのアプリから利用できない機能は、ブラウザからWebサービスにアクセスすると使えるものがある。たとえば、Gmailのフィルタ追加などの詳細設定はフル機能のWebのみ利用できる。
デフォルトではモバイル向けに機能制限されている場合があり、ブラウザ設定で「PCサイトを表示」をONにする必要がある。

画像編集には良い手がない

画像編集はgimpがあればひと通り可能だが、Androidにはこのジャンルのソフトウェアがないため、ほとんど何もできない。チャート描画はdraw.ioが先々は有望かもしれない。

Windowsの業務ソフトは一部税務のみ残る

以前はWindowsを必要とする分野はそれなりに多かったと思うのだが、今となっては一部の業務ソフトや特殊な分野に限られるのではないか。
ビジネスでは少なくとも税務に対応できる会計ツールは必要となるので、 LucaSuiteを開発した。その結果、最低限Windowsを使う必要があるのは、eTaxとeLtaxの確定申告時に絞られた。

また、WindowsリモートデスクトップクライアントにはMicrosoftが提供するAndroidアプリがあるため、Windows機器は手元に不要、という構成も作れる(セットアップは必要)。リモートデスクトップは一般的な業務アプリケーション操作には何も支障がない。

まとめ

Androidタブレットには随所に粗もあるが、日常業務のかなりの部分を実行できている。
また、タブレットを積極的に使う理由として、タブレットで可能なことはスマートフォンでも可能、という意義がある。 スマホは画面が狭いためさすがに常用は厳しいが、それも仕事内容による。
いざという時スマホだけでも実行可能な範囲は広いほど助かる。

タブレットについては相当めどが立ったので、次の段階ではスマホの利用拡大にトライすることになろう。 たとえば、Googleスライドのコンテンツ品質を整備できれば、営業プレゼンはスマホで対応できるはずだ。

タブレットの検証を進める過程で、クラウド側の機能整備を進めた結果、ほとんどの機能をクライアントから除去できた。この点はタブレットが提供する機能ではないが、Infrastructure as Codeで再現可能なシステムになると、マルチデバイスに対応でき、クライアント移行そのものが消失する。

既述のとおり、eTax申告などWindowsから置き換えるメドの立たないものも残っている。ポイントは、機能を切り分けることだ。Windowsの必要性を年間数時間に限定できれば特に制約にならない。
作業時間の長い仕事をタブレットで行えるなら、メインの仕事道具をタブレットにすることは問題ない。

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