COVID-19の行きがかり

2023/05/06

日本では週明け2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症の区分が5類感染症となり、行政上ノーガードに移行する。
ただ、何か底流の状況が改善したわけではない。

ウイルスの変遷

けっきょくコロナウイルスは世界中に完全に定着し、一定の割合で死亡する感染症であり続けている。
2020年頃の初期段階では「新規感染症は経時的変異により弱毒化する」との期待があったが、その主張は早々に退潮し、いまも死者は出続けている。

これはある種予期できたことで、 エボラ出血熱のように宿主が劇症ですぐ死んでしまうようなウイルスでなければ弱毒化へのバイアスはかかりにくいだろう。
COVID-19は登場当初から史上最速ペースで拡大する能力を持っていたので、毒性の変異に対してはフラットであったと考えられる。

むしろ、2020年には子供には発症しない病気であったものが、今では子供も死亡する病に変異しており、やや強毒化しているように見える。
強弱という簡素な見方は無力であった、というのは一つの帰結だ。

もう一つの懸念は、その論に従うなら「弱毒化はしていない」といま認識すべきなのだが、当初のロジックごとすっかり忘れてしまって危険そのものが無くなったかのように捉える人が多いことだ。

ワクチンは有効だったが永遠ではない

死に至る重症化はワクチン接種が相当防いできた。
しかし、グローバルなパンデミックに発展してしまったことで変異の地盤が確立し、ワクチンの効果は限定的になった。
また抗体そのものが減衰することによる限界もある。

ウイルスとワクチンのイタチごっこは、ウイルスにとって有利であろう。
ワクチンは有効だが、継続的に打ち続けるということに対して知見があるわけではない。
WHOが多回数の接種への警告メッセージを出していたのは妥当だろう。

僕自身も単一の抗体に対するブースターまでは既知の範囲であると考え、2回は受けたがそこで打ち切った。

財政の圧迫も考えれば、この先もう1ラウンドのパンデミックが来たときに、ワクチンを前提にできない展開もありえる。

感染経路がけっきょく不明

コロナ遺伝子のバリエーションの追跡だけは詳細に分かっているが、けっきょくのところ感染経路の有力なモデルには結論が出ていない。
もう3年が経過したが、飲食店の休業強要の合理性や安倍首相が配ったマスクの効果はいまだにさっぱり分からない。

分からない、ということから3年考えて、エアロゾルへの接触が有力なのではないかと見ている。
たとえば一部の油っぽい呼気の人がウイルスをカプセル状に保護して散布している場合、感染モデルが不均一なチャネルになる。

バスや電車といった公共交通機関で居あわせただけで感染するのだが、そのようなスーパースプレッダーがいるのかいないのかは区別できない、という状況なのではないか。

マスクは感染を防ぐ効果はあまりないが、スプレッダーの飛沫放出量を減らす効果があるので、今後、公共交通機関経由で目に見えて感染が増える可能性がある。

ブレインフォグの懸念

現状"Long COVID"後遺症については確たることが分かっていないが、COVIDは罹患→治癒という病ではなく、感染後に潜伏共生状態に移行する観察が多く報告されている。

生活に支障が出る症状もあり、個々人の観点からは感染の影響は見通しきれないものがある。
また、脳に影響を与えるブレインフォグも自覚症状として認識されており、すでにビジネス活動に影響が出ているのではないかという感触がある。

企業のゴーイングコンサーンから言えば、手抜きなく活動評価を実施し、人員入れ替えを徹底することの必要性が高まっている。
しかし、企業トップがブレインフォグだったとして、そう手際よく交代劇を演じられるとはどうしても思えないのだ。

旅客機という不都合な真実

コロナウイルスは生物兵器だったのではないか、という見方はいまだに取り下げられておらず、どうやらそれはそれで調査を継続しようとしている。

しかし発端はともかく、パンデミックになった理由はグローバリゼーションによるものだ。

とくに今般の媒介は飛行機の浸透によるところが大きい。

日本では初期に豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号が入港できずに海上で隔離され続けていたが、けっきょく船を厳重に検疫しても水際防衛にはならなかった。
飛行機の普及以降は、多くの人が船に乗る機会がないのだから当然の成り行きといえる。

今後、新種のウイルスが出現した際に、もっとも効率よく世界に運搬するのは旅客機であり続けるだろう。
離陸から着陸までは閉鎖的な密閉空間にパックされ、乗り継ぎにより効果的に複製していく。

COVID-19は「パンデミックは許容できない」と認識するきっかけであった。
パンデミックを実効的にコントロールするにあたり、航空システムのセキュリティホールは修正しなくてはならない。

おそらくスピードを求め過ぎたことが問題だから、24時間検疫などのスローダウンを追加する必要があるだろう。

堅牢性の織り込みが立ち消える懸念

飛行機と同様に、企業はリモートワーク導入を積み残している。

規制緩和と同時に実オフィスに回帰する傾向がある。 米国のテクノロジー企業は出社を強制する例が増えており、リモートワークの機能不全は一般的な現象なのだろう。

リモートワークの生産性は、個々のケースにより実情が異なる。
業績を厳しく計測していた企業だけがリモートワークの出力ダウンを確認できたということもあるだろうし、元から生産性の低い企業がオフィスを引きはらうことで地代家賃がプラスになったという例もあるだろう。

これらを横断して言えるのは、リモートワークはリスクヘッジのオプションであり、生産性を最適に導くものではないということだ。
パンデミックとの関係では、公共交通機関を使うことによる感染とオフィス空間の媒介を避けることでビジネス継続のオプションを増やす効果がある。

いま、行政による規制がなくなったことで、これからリスクは増える。
堅牢性を確保する主体が個々人に切り替わったのだから、リスクヘッジは自ら設計する必要がある。

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