電子政府が埋めるべき穴

2020/04/27

先ほど、 協会けんぽ 保険料額表変換ツールという極めてローカルなツールをGPLライセンスで公開した。
じつは僕が必要としているのは、東京のごく一部のテーブルだけ。それが配布データがExcelにパックされてしまっている都合上、ツール変換せざるを得ず、けっきょく47都道府県分できてしまうので、オープンソースで行こう、と考えた。

ローカルと言えども協会けんぽは「3,850万人の加入者、200万事業所からなる」最大勢力で、健康保険加入は義務だから、これは電子政府の一角と言える。
日本の電子政府にはExcelがたくさんあり、プログラムで読み込めない。今回作ったツールも、ExcelをCSVに変換したうえでさらに変換している。

プログラムから簡単に読めることは大きなポイントだ。紙がなくなったから良いというものではない。
近年のクラウド化の進展は、データフォーマットの規格化が基礎的な原動力になっている。
プログラミング言語やOSを問わなくなれば、ツールの拡充が進む。
中でも重要な分野では、データ規格に止まらずSDK(Software Development Kit)というアプリケーションの部品も配布される。
SDKがあるということは、そのデータがどのように利用されるかが予め定義されているということだ。

保険行政の電子政府は、的確に金額計算して徴収する目的のものだから、使われ方は明確だし、そこまでやらないといけない。

リファレンス実装の必要性

最終的な目的としては、税金や保険料は手間をかけずに自動徴収するツールを政府が無償提供しなくてはならないと思う。
このツールのテーマである給与計算について言えば、本来は給与の総額さえ定まれば、所得税も健康保険料も年金保険料もすべて導出できるものだ。

政策論になるが、僕が大学の税法の講義で習ったのは、徴税効率がもっとも高いのは 人頭税ということだ。
今そうなっていないのは、言い訳も含めて理由はある。ただ、徴収にかかる事務コストは最終的に納税者の負担になるから、比較的純度の高い悪事ととらえるべきだろう。
仕事のための仕事は撲滅すべきだし、この先日本にはどんどん余力がなくなっていく。

やるべきことができていない点についても色々考えたのだが、結論としてできる人がいないのだろう。
おおざっぱに言えば、米国・中国・インドあたりの人口がなければ、各分野に潤沢に人材が行き渡らない。そこで大多数の国では物ごとがうまく進まず、日本もそのような国の1つに過ぎないのだと思う。

先だって、市場の失敗・政府の失敗に言及したが、これもまたその1つである。

必要なのは機能するリファレンス実装だが、市場にも政府にもそれを供給する者はない。
寂しい話でもあるが、制度として確立したチームワークなどその程度のパワーなのだろう。

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