熱波潮流

2024/10/01

日本の10月はかつては秋だった。秋を迎える前に「秋めく」時候もあり、涼しい風が吹く日がぽつぽつ混じるものだった。
今年はまだ30℃を超える日がある。

夏のあいだエアコンをかけずに仕事をしてきたが、どうやら限界を迎えている。季節に対処しないと乗り切れない。

体感気温の水準は昨年と同じで、昨年の暑さは異常気象と報じられていた。
異常気象が2年連続したことで、外れ値のような異常気象の可能性は1万分の1程度の確率に見直す必要があると気象学者が述べている。

体験したことのない環境に遭遇するとそれが度を超えたピークであるかのように捉えがちだ。
夏の高温については通過点にすぎず、まだまだ上がり続けるシナリオに備えるべきなのだろう。

都市別気温を見ると、東京だけでなく静岡や広島、福岡なども一様に40℃にまで上昇していた。
要するに近海の海流の水温が上がったことで、日本全体が熱い蒸気に包まれた状態になった。

地球温暖化の目に見える影響は、日本では酷暑となった。
海流の熱エネルギーは台風も同時に強化し、太平洋に面する地域で激甚水害が増えている。

活動が自然に遅くなる

知的生産が必要なビジネスは、じつは住環境の快適さをシビアに要求する。

暑さの継続体験から言うと、気温30℃、35℃で思考の働きは非常に変わる。
また、35℃以上では1℃ごとにダメージの質が変わる。38℃ともなれば熱病の症状が出る。

酷暑の渦中では、エントロピーの法則に直接制約される。
情報を生み出すときや消去するときには必ず熱を捨てなくてはならないのだが、体温と環境が同じ36度となれば皮膚から排熱できなくなる。

今年頻発していた38℃ともなれば血中よりも気温が高く、おそらく外界からつねにランダムデータを書きこまれているのと同じ効果がある。

今夏に進めたタスクの1つは 灼熱のVoIPに書いた。
ネットワーク・エンジニアリングは頭のワーキングメモリーを強く要求する仕事であり、真夏に適したタスクではない。

アーキテクチャを俯瞰する能力が落ちるため非常に進めづらかったが、作業記録を書いて緩慢に進めることで乗り切れた。
2年前に 書かなければ消滅するメカニズムで述べたことをあらためて実感する。風化作用に対抗する原始的な手段は、記述し描写することだ。

熱を捨てられない環境では、頭の中に情報を保持できない。
これを再現してみたいのであれば、サウナで物を考えてみれば良い。

文明社会の熱的平衡には38℃で十分足りる。

ヒートポンプが生命維持装置に

酷暑環境を前提とすると、空調がこれまで以上に必須インフラになる。
ヒートポンプの原理と挙動につき、理解を深める必要がある。

ここ2年の熱中症の推移を見る限り、38℃の環境では普及しているエアコンが破綻なく動作していることは分かる。
よく分かっていないのは、たとえば気温43℃になったときに冷却電力が比例の関係なのか、そしてそれを集合させた結果、送電インフラが消費電力をまかなえるのかといった点だ。

普及している機器には動作リミッターがついていないから、破綻シナリオでは外気温に直接さらされる展開となるだろう。
明らかに死者が続出する状況になり、ビジネスが随所で寸断する。

空調服が有望

今はまだ一般的ではないが、宇宙飛行士向けのスーツのように、いずれ空調機能をもつ服が広まるのではないか。
夏が来るたびにあらゆる場所で冷却が必要となり、空間効率の観点で各個人のごく周囲のみ冷やすことが有効というアプローチは合理的だ。

数年前から工事現場向けにファンのついた作業着が普及し始めたが、ついに外気温が体温を超えたためファンによる換気だけでは効果がなくなった。
積極的に冷やす服は、冷却機能にとどまらず温度制御や電源供給など複雑なシステムを必要とするだろう。

即座に安定供給できる商品にはならないだろうが、温暖化は着々と進行しているので流通している範囲でトライすべきだ。

温暖化の対処には知力が問われる

この話題を社会テーマとしてとらえるなら、地球温暖化への警鐘になる。

地球温暖化に対するスタンスを質問されたなら、大多数の人が反対であり対策すべきとの立場をとるだろう。
にも関わらず、事態は着々と進展している。

温暖化という現象が連鎖的なシステムであるために、学者でもなければ理解できないものになっている。

押し上げている+1℃は、危険な兆候を示しているようには見えない。
多くの人の温度に関する知識は水の沸点である100℃程度しかなく、判断基準を何も持っていない。

ただ本当は、真夏にエアコンを止めて丸1日過ごせば分かることなのだ。従来と同じ行動をとれるのだろうか。
僕は総合的な理解のために2シーズン過ごしているが、正直1日で理解できることが多い。

地球環境はまだまだ連続的に温暖化して行けるが、人間の方は崖っぷちに追い込まれているのではないかと思う。

ことここに至っては、社会テーマの提言には実効性がない。
もっと個々人のサバイバルのための日常的な対処法が必要になる。

そして個々人の行動に局所化しても、なお問題が難解であることに気づく。
おそらく熱制御工学などの知識が必要なのだが、その導入分野すら学んでいない。

気象についても、学校が教える内容は温暖化の影響は除外していた。
除外することは妥当だが、この先存続できない地域が発生しうるという展開に対して全く役立たない。

これら温暖化に関する学習範囲が、社会生活の中心目的とは異なる点も関わりづらさを助長している。
ただ、ここまでの敗勢は不作為こそが原因だ。座して死す、と言いかえても良い。

現実問題として毎年死者も続出する展開になってきたので、難題を正面突破するより他ない局面と見る。

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