人材市場のレモン問題攻略法

2013/10/25

見通しづらい業界なので市場特性を整理したい。

職業紹介ビジネスの特性

キャリアの観点で関心の高い正社員ポストを前提とすると、職業と人材を仲介するエージェント・ビジネスは、流通業の事業特性を持つ。

人を対象とするためサービス業とみる誤解が起こりやすいが、収益構造はあくまで流通業。

また、参入障壁が低く業者が乱立する構造になっていて、業界全体としてはゼロサムゲームになっていると考えられる。

業界全体としてみると、職業紹介ビジネスへの新規参入は付加価値を生みづらい状況だろう。

やりたい人がやるべきビジネスと言える。

レモン市場の課題

人材ビジネスのもうひとつの特性は、クリアな正解がないことだ。

流通の観点から見ると、人材、職業ポジションの両方とも評価が曖昧で、客観的な良し悪しが判断しづらい。

価値の曖昧なものが多く流通すると、時が経つにつれて粗悪品ばかりが横行するレモン市場になりやすい。

レモン市場では、買い手、売り手とも疑心暗鬼になり取引が活性化しない症状に陥りやすい。

このような市場の失敗に対処して成功できた事例として、中古車流通のガリバーインターナショナルがある。

参考:ガリバーインターナショナル創業会長インタビュー (経営者通信Online)

ガリバーの成功ポイント

中古車市場も価値の格差の大きい市場だ。

高額商品だが、中古として買い手がつかないモデルは価値が低いし、車両品質も不透明だ。

ガリバーのポイントは、買い手の情報を集め切った点にある。

ある時点のベストな買い取り相場(価格×量)をもとに、高い値付けで売り手から買い取ることができている。

情報の網羅率を高めることで、商品の値付け精度を上げている点が根本的な成功要因だろう。

多くの地場業者は狭いターゲットにアプローチするため、局所解または解ナシしか得られず流通機会を作りづらい。

けっきょく流通業に規模の経済は欠かせない。

人材業界がガリバーを生み出しづらい要因

価値の曖昧なものの流通には、ニーズを広範に拾い集めてプライシングの妥当性を高めることが有効だ。

ただ、人材業界にはガリバーを生み出しづらい要因もある。

流通の要素を商流・物流・金流と分けたときに、中古車市場では物流コストが大きく載っている。

冒頭の課題のとおり、中古車は飛ぶように売れるわけではなかったため、クルマを置いておくスペースが欠かせない。これが設置コストになっていた。

ガリバーの場合は、すぐ売れることを前提としていて、取引あたりの物流コスト(販売待ち車両の地代)をカットできた。究極は、運搬車両の上にのって道路を走っている状態で売れていくという。

これに対して、人材業界は商流一本で勝負する世界であるため、中古車のような物流の利ザヤをとる余地がない。

構造上、営業命であり先行事業者の地盤は堅い。

人材業界はどのようにアプローチすべきか

レモン市場を解く前提として、少なくとも仲介業者は市場と潜在市場の情報をできるだけ網羅的に得る必要がある。

小ぢんまり手がけたら、その時点で負けは確定と言える。

また、情報の探索コストを手数料からまかなう必要があるが、手数料を上げると案件が減り市場が狭くなるトレードオフがある。

結論として、商流の中で解くしかない人材業界では、以下のいずれかを選択することが社会的なバリュー創出に欠かせない。

  • 利ザヤを落として件数を稼ぐ高回転モデル
  • 求職者側が手数料の一部を負担するモデル

整理してみて改めて思うのは、いずれの選択をとっても実行力が問われるということだ。

中途半端に着手すると、そんなに世の中の役に立たないという結論に陥りやすい。

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