ボラティリティを経営する

2015/05/25

経営とは変動(ボラティリティ)を取り扱う仕事だと思う。
いろいろ経験した結果、いま重視している基本原則は、以下の2点に集約されるようになった。

  • アップサイドの変動を取れるようにすること
  • ダウンサイドの変動を避けること

物語的に言い換えれば「幸運の種をまき、不幸の芽を摘む」とも言える。

アップサイドを取るとは何か?

経営では、ねらった目的を達成するだけでは足りない。“思いがけない成功"が起こり得る状態を作ることが重要だ。
アップサイドの変動とは、思いがけない成功に他ならない。

思いがけない成功を呼び込むためには、結果のわかりきっている活動の比率を下げることだ。
あらかじめ決められたことを実行するだけでは、結果も予想できる範囲におさまってしまう。

広告やPR、営業など、市場に提案する活動の中に思いがけない反響が含まれる確率が高い。
マーケティングに積極的な会社ほど成長機会が大きいのはアップサイドの遭遇確率が高いからだろう。

ダウンサイドをどのように避けるのか?

逆にダウンサイドリスクは、思いがけない失敗や損害を指す。

アップサイドをねらって取りに行くことはできないが、ダウンサイドを回避する努力は可能だ。
なぜなら、人生にはささやかな成功もめったに起こらないわりに小失敗なら山ほど遭遇するからだ。誰しも体感しているとおり、大失敗には構造的な不注意や慢心がつきもの。

緻密にロジスティクスを考え、危険の兆候に敏感な組織を作ることだ。
ひとたび決まった実行策は謙虚に進めるよりほかはない。

優先順位を入れ替える

経営者はビジネスの不確定要素に適応し、できれば制御する役割を持っている。

自社のやろうとしていることを見通して、分かり切った結果にしかならないのであれば中途半端な活動を減らすことが重要だ。

ブランド論ではさんざん語り尽くされていることだが、違いを作り市場に届けることで機会を創出する。

その一方で、足下のプロセスでは組織の注意力が散漫になって失敗の温床にならないよう、警鐘を鳴らすことも求められる。

アップサイドとダウンサイドのいずれの観点でも、惰性を避け、優先順位を入れ替えることから経営力が生まれる。

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