Luca SuiteというERPをオープンソースで開発していて、名称先約の意図で昨日RubyGemsにもプッシュした。名前はもちろん ルカ・パチョーリから来ている。
正直Luca Suiteは、開発者ではなくユーザーとして利用したかったジャンルのソフトウェアだが、時代が早かった。
「ユニバーサルなERPフレームワークがオープンソースで確立すべきだ」という認識に世界はまだ至っていない。
ERPは、経理・会計や販売管理、生産管理、給与計算、資産管理など企業活動に関わる幅広いソフトウェア分野を含む。
実用すると分かるが、これらはなるべく地続きであることが重要だ。というより、ERPをうまく構築できなければ、それぞれ管理はバラバラになり、ひいては手作業になる。
そのような業務ジャンルを経営管理という。
社会が進歩するためには、経営管理が純粋なオーバーヘッドであり、法人の存在コストであることを認識することが重要だ。
僕は複数の企業を同時に運営することで、そのことを痛感した。
法人のコストで一番大きいのは、金銭ではなく時間を奪われることだ。複雑な仕事はできる人間が限られ、その人たちがやるべきことは当然他にある。
だから経営管理については、人を配置するより自動化することの方が価値が高い。
また、この分野は各国政府の行政とも密接に関わる。
分かりやすいのは税務計算だが、保健福祉の行政サービスを暗に企業にアウトソースさせている面もある。
つまりERPのハードなロジックは法令によって決まる面が多々ある。
要するに文化・文明の視点で考えると、行政が直接ERP実装に関わることがとても重要だ。
現状、行政は法令を策定し受付窓口を設置するところまでで止まっていて、各種計算事務は企業が実装・運用しなくてはならない。
多彩なプロセスで計算を強要するような法令のデザインも良くないが、立法過程の福祉的な主張で歪んでいった末の制度になりがちなので希望はもてない。
これは隠れ徴税コストであり、正味の税収が落ちるという面1つをとっても良くないが、広く薄く時間と集中力を奪うことで国力が落ちることの方が問題は大きい。
ただ現実的には、どうやら公共セクターにはソフトウェア開発力が全然ない。なんだこれは、というツールが山ほど出てくる。
今後の展望を考えても、人口上位のインド・中国・米国といったごくわずかな国をのぞけば、ソフトウェア産業ですら人材不足の構造は続くのだろう。望むべくもない。
幸いソフトウェアは非競合財であるため、市民の立場で供給することも有効だ。
僕は実用に迫られているため、最低限動作するものを供給していけるだろう。同じことをやろうと考えた人のリファレンスの水準にまずは到達できるよう前進していく。