組織の営業力を強化するニーズ別布陣

2013/05/31

サービス仕様が固まってきて顧客成功事例も出てくると、いよいよビジネス開発の最終段階、「営業の組織化」に取り組める。

言うまでもなく、1件でも多く受注できればビジネスを加速できるが、まあそう甘いものでもない。

結局のところ営業資源の量によって受注件数を積み上げていくのが堅実なビジネスモデルと言える。

組織力と利益のトレードオフ

組織化にあたり、誰がどの案件を担当するかが差し迫った課題となる。

できることなら若手で受注を獲得していけた方が、事業の安定性は高まる。

また、営業活動を継続するなかでスキル向上やニーズに関する組織学習も進めていきたい。

一方で短期的に受注できることも重要だ。

利益は事業の選択肢を増やす。

組織力と利益のトレードオフを解くには、どのような配置が適切だろうか?

ケースを分類して考える

受注と組織成長を両立したい場合、気をつけるべき案件は「スキル差の影響で受注/失注が変わる」ような案件だろう。

「ニーズ=商品/ニーズ≠商品/ニーズなし」にケース分類することで、注意すべき案件の類型を抽出してみる。

「ニーズ=商品」のケース

「ニーズ=商品」は、顧客が課題を持っていて自社商品が課題を解決できる場合を指す。

このケースは比較的単純で、ニーズを満たす商品説明ができれば受注する確率は高い。

ニーズが顕在化している場合は、顧客が課題を認識しているので特に話が早い。

潜在的なニーズの場合には、いちど課題の確認により顕在化させた方が確実ではある。それでも、「ニーズ=商品」の場合は、商品説明だけでメリットが認識されることも多い。

商品説明は初歩的な営業スキルだから、担当者による差はつきづらい。

つまり、自社商品がカバーできるニーズを持った顧客であれば、営業初心者であっても成果は出やすい。

「ニーズ≠商品」のケース

「ニーズ≠商品」は、顧客が課題を持っているが、自社商品ではその課題を解決できないケースを指す。

結論から言うと、このケースがもっとも難しい。受注するためには、ニーズに合わせて商品を変更する必要がある。

法人営業でよくテーマにとりあげられる「提案力」とはこのことだ。

営業担当者が顧客の課題を十分に把握したうえで、ニーズを満たす提案を作らなくてはならない。

このように、「ニーズ≠商品」の案件では、営業スキル不足で受注できる案件が失注になってしまうことが起こりやすい。

この類型の案件比率が高い商品は、チーム組成いかんで営業効率が落ちる。

また、商品があまりに顧客ニーズに沿っていない場合、商品仕様そのものの見直しが必要になるが、「提案力」のない組織ではフィードバック情報をうまく得られない可能性がある。

受注要因にしても失注要因にしても、顧客要求の理解の裏表でしかないからだ。

ニーズなし

「ニーズなし」の案件は、言うまでもなく営業スキルに関わらず失注する。

プッシュ型の営業では、かなりの確率でニーズのない案件が含まれる。

短期的には、誰が行っても受注できない現象は自然に起こるので特に問題はない。

ただし注意すべきなのは、失注した案件が本当にニーズがなかったのか?という点だ。

「ニーズ≠商品」の案件と「ニーズなし」の案件は、提案力のない組織ではいずれも失注となる可能性が高い。

「ニーズなし」の案件で重要なポイントはニーズがない背景をなるべく詳細にヒアリングすることだ。

組織運営上の注意点

「ニーズ=商品/ニーズ≠商品/ニーズなし」の含まれる比率によって、求められる組織的な営業スキルのレベルは異なる。

「ニーズ=商品」案件の比率が高い、いわゆる商品力の強い企業では、素朴なローラー作戦は有効だろう。

その逆に「ニーズなし」比率の高い市場でも若手の活用は有効だ。

費用対効果の面だけでなく組織学習の観点でも、ニーズなしの案件は若手の機会といえる。

ただし失注が多い商品は、原因分析に配慮すべきだ。

いずれにしても、局面の打開に顧客要求のヒアリング力が必須になってくる。

組織のニーズ把握力を鍛える

日々の営業施策上の工夫として、詳細な報告を求め続けるよう努力すべきだ。

ヒアリングの着眼点をフィードバックしていくことで、ニーズの有無の判定や提案力の向上を期待できる。

また、提案力を持つメンバーは「ニーズ≠商品」の案件に優先的にあたった方が良い。

これにより、獲るべき案件をとりやすくなり、商品力の課題抽出も補強できる。

案件ごとにニーズ仮説を立て、精度を向上できれば、組織の営業力を強化していけるに違いない。

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